今回は電気自動車と自動運転に関するニュースを取り上げます。先日、グーグルの親会社Alphabetの傘下にあるウェイモWaymoから、電気自動車+自動運転に関してボルボと共同開発を行うという発表がありました。これは新たに結ばれた両者の国際的連携の一環であり、開発される車は配車サービス向けに設計されるようです。
今回はまず、本記事をもとに自動走行に関する状況をみていきましょう。WaymoはもともとGoogleの自動走行プロジェクトとして発足し、これまでも地域限定した自動走行の実証を行ってきました。今回発表された連携の中でWaymo側としては、人工知能の開発に加えて、カメラ、ライダー(LiDAR, 後述します)、レーダー等の自動走行に必要な機器の開発に集中するとされています。新規配車サービスが始まる時期に関しては、まだ何も述べられていません。
一方ボルボは、中国の車メーカーであるZhejiang Geely Holding Group Coが保有する企業で、これまで配車サービス企業ウーバーへ自動車の提供を行ってきました。ウーバーもこれまで自動走行に関する開発を行ってきましたが、2018年のアリゾナでの自動走行による交通事故を境にして、その開発は足踏みをしている状況でした。さらにコロナウイルスの影響によって人件費含む大幅なコスト削減を行っており、CEOであるDara Khosrowshahi氏は、競合が有する技術を使うことも考えていると述べています。
自動走行を開発する会社や他にもあり、アメリカのテスラ、GM、フォード、Comma ai、日本のトヨタやホンダ、ボルボのような中国資本のメーカー等多岐に渡ります。その中でも、これまで先頭を走ってきたのはテスラと言われています。2019年の彼らのプレゼンテーションでは、既に自動走行に必要な機器の搭載は完了しており、ソフトウエアのアップデートによって今後安全性能と適用可能な範囲を広げていくと強調されています。
ここで述べておきたいのが、自動走行と言ってもその特性によっていくつかの段階に分かれているということです。大きく二つの要素(どこまで人の介入が必要か?と、どのエリアまで対応可能か?)によって、6段階のレベル(レベル0~5)に分けられ、現在テスラなどが提供しているものはレベル2と言われています。これは
「自動車は自動走行に必要な機能(操舵、加速、減速)を賄えるシステムを備えているが、それらが機能しない場合に人の介入が必要不可欠なレベル」
という定義です。つまり、機能的には自動走行できるけれども、運転手はハンドルを握て注意を怠ってはならない状態です。
テスラがとっている自動走行開発の中で興味深いのは、基本的に情報の入力方法としてカメラとレーダーを採用し、ライダーと呼ばれるシステムは採用していない点です。ライダーとはレーザーの反射原理を利用した360°で物体を認識するためのシステムです。常時数千ものレーザーを照射することで、リアルタイムで物体を認識できます。長所としては、車の相対的な位置をより正確に把握でき、テスラを除く全メーカーが開発にあたっています。一方で、システムが複雑になるためにコストが高く、テスラとしては「いずれ必要のなくなるマニュアル車のクラッチのようなものだ」という姿勢をとっています。
肝心の安全性に関して、テスラは一定距離当たりに発生する事故件数をもとに人の運転と自動運転を比較しており、2019年末の発表では、平均的な人の運転よりも9倍は安全性に優れるという発表もしています。ただし、あくまでこれは限定的な道路での走行データをもとにしてものであり、予期せぬシーンによる事故の可能性も含めて、自動走行の在り方は今後も議論されていくでしょう。
自動走行に関して、最近では、GMやフォードも自動走行へ力を入れてきており、アメリカにおける競争は激しくなっております。Waymoは2020年始めに、自動走行に関して約3000億円もの資金を外部から調達しています。このボルボとの共同開発を含めて、今後のどのような動きを見せていくか、注目されるところです。また、日本の車メーカーからの巻き返しにも、是非期待したいところです。
今回は、自動走行に関する側面に焦点を当てて、本記事を紹介してきました。次回は、電気自動車に関してもう少し詳しく世界の状況を見ていきたいと思います。