二酸化炭素の増加で何が起きる?

先日は、大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が観測史上最大になったという記事を紹介しました。実際に観測されたCO2の濃度は417ppm(パートパーミリオン)で、過去に同様の数値だった時代はなんと数100万年前のことだと言われています。その当時は現在よりも気温が3℃程度高く、海水は25m以上も高い、現在とは全く異なる地球環境だった考えられています。そこで今回は、現在進行形で起きているCO2の増加が地球の温度そして人々の生活へ与える影響を見てきたいと思います。

1958年に人類は初めて大気中のCO2の量を観測したのですが、それ以降大気中のCO2は継続して増加してきました。それに並行するように、地球の平均気温も増加を続けています。ここで、将来のCO2の濃度を正確に予測することは極めて複雑ですが、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)を中心として、多くの科学者達が上記のデータを基本に大気中で生じている現象をモデル化し、今後の排出量と予想される気温の範囲を複数のシナリオに分けて公表しました(下記YaleEnvironment360参照)。

こちらのグラフはNPOであるGlobal Carbon Projectから出されたものですが、横軸が年代、縦軸がCO2排出量となっており、それぞれの色ごとに異なるシナリオを表しています。現在のCO2排出量が今後も続くと仮定したのが赤線のシナリオで、その場合、50年以内に大気中のCO2濃度が500ppm(パートパーミリオン)に到達し、3℃以上の気温上昇が生じるだろうと予測されています。

この3℃以上の温度上昇はどのような意味を持っているのでしょうか?地球の温度が人々の生活に与える影響を正確に予想すること、これも困難を極める作業です。しかし、現在受け入れられている説の1つでは、地球の温度が3℃以上増加した場合、地球環境の変化として

-極めて激しい天候の多発
-氷河の融解と著しい海水の上昇
-干ばつと自然火災の多発
-アマゾンのサバンナ化
-食料供給の問題の加速
-大量の移民の発生
-河川の減少
-水不足問題の加速

-ツンドラの融解と新たな温室効果ガスの発生

が起きるとされています。これに伴う人々への影響は、

-干ばつ、高温、海水上昇で住処を無くした移民の大量発生
-河川の減少による水不足問題の深刻化
-自然災害(台風、干ばつ、火災)の被害の多発と深刻化
-温度増加による伝染病の分布の変化


等が挙げられています。そしてこうした状況が一度発生しまうと、もとに戻すのに最低でも数世代を要し、その間にも大量の種が絶滅してしまうとも言われています。これはサステナブルな未来でしょうか?

これを聞くと、「どうせこれらは予測であってそうならない可能性だってあるでしょう?」「もっと長期的に見れば氷河期が来るかも知れないではないか?」と思う方もいるかも知れません。確かに上で述べた事は予測であり、絶対というものではありません。しかしながら、導き出された予測に使われているモデルがこれまでのデータと整合性があり、その予測が多大な危険性を伴っている場合、それを無視することは、多大なリスクを生じる危険な賭けになってしまいます。この場合、賭けの対象は未来の人々の命です。

このような考えに立って、国際連合が主導し、気候変動枠組条約に加盟する全196カ国全てを巻き込んで温暖化に対応する目標を決めようとした試みが、有名なパリ協定です。この協定には、実際に先進国も展途上国も参加して、先程のような議論を理由に2℃以内に温暖化を抑えるというのが人類の共通の目標であると同意されました。(残念ながら、ある国はこの条約から抜けてしまいましたが、これはまたの機会に取り上げたいと思います。)

この目標は、上記のグラフのうち黄色い線のシナリオに対応しているとされており、その実現には2050年にCO2の排出量をゼロにする必要があります。そして、そのためには文字通り今すぐにでもCO2の排出を抑えていく試みを実践していかなければなりません。

パリ条約に加盟する国々は、それぞれに具体的な、もしくは文言のみの排出目標を設定し、取り組みを始めています。おそらく、国レベルで最も精力的に活動を行っているのは欧州連合(EU)でしょう。EUは、ポストコロナの復興計画をグリーンディールと名付け、CO2の排出が低い産業への投資や国境炭素税と呼ばれる外部からの輸入品に対する炭素税の検討を始めています。

では、日本の状況は、国際的にみてどうでしょうか?ポストコロナの時代に、どのような国や企業が、環境エネルギーの分野をリードしていくのでしょうか?次の機会では、このような話にも焦点を当ててみたいと思います。

コメントを残す