CO2からガソリンが創られる未来?

今回は、二酸化炭素(CO2)からガソリンを作ろうという非常に挑戦的なプロジェクトに関するニュースを紹介します。自動車メーカーBMW傘下のベンチャーキャピタルBMW i Ventureは、Prometheus Fuelsというベンチャー企業に投資を行ってきました。この企業は、大気中からCO2を回収して、効率的に変換することでガソリンを合成しようとしています。作られたガソリンは、化石燃料由来のガソリンと同等の価格帯でガソリンスタンドに販売されるそうです。しかも、このニュースでは早ければ今年中に実証販売がされると述べられています。



BMW i VenturesのGreg Smithies氏は記事の中で、「空気中の二酸化炭素から価格競争力のあるガソリンを作る技術はゲームチャンジャ―になりえる。平均的に車の寿命は8年以上とされている。つまり、世界全体が明日から100%電気自動車を購入し始めたとしてもガソリン車がなくなるのに10年以上かかる。これは非現実的なシナリオで、電気自動車への置き換えはさらに遅くなるだろう。カーボンニュートラルなガソリンを空気から作っていくことでPrometheus Fuelsは現在のガソリン車が気候変動に及ぼす影響を顕著に抑制してくれるだろう。」と述べています。

Prometheus Fuelsは、Rob McGinnis氏によって、Y Combinatorというベンチャーキャピタルを通して設立されました。会社のミッションは、

ー空気中のCO2を取り除き、ガソリンやジェット燃料、ディーゼル燃料といった現行の移動手段に変更を加えずとも直ちに利用できるものに変換していくことで、化石燃料の必要性を無くしていく。

というものです。学術誌であるJouleに掲載された最新のコメント中でMacGinnis氏は、技術的な進歩がどのように価格競争力のあるガソリンやジェット燃料を生み出していくかに関して以下のように説明しています。

1. コストが大きくない装置による電気を用いたCO2の変換によって、CO2からエタノールなどのC2燃料(カーボン原子を二つ含む燃料の総称)が選択的に合成できます。この手法は、従来の多段階のプロセスで、CO2から一酸化炭素を合成した後に燃料をつくっていく方法よりも、消費エネルギーを抑制することが可能です。

2. エタノールから燃料を合成する方法は、発熱反応で小規模化でき、中程度の温度と圧力で進行できるため、比較的コストがかかりません。

3. 従来課題として、反応物からエタノールを分離精製する難しさがありました。しかしながら、ナノテクノロジーを駆使した新しい分離方法によって、温度や圧力を掛けなくてもエタノールの分離が可能になりました。

彼らのプロジェクトは、これら三つの技術的進歩を組み合わせることで、化石燃料由来と同等のコストでCOからガソリンを2年以内につくっていくだろうとされています。現在は実証段階にあり、次の挑戦として、いかに早くスケールアップを進めていくかも重要になってきます。

以前の記事でも、CO2から化合物を作っていく研究開発を紹介しました。このような試みは、従来は気候変動や温暖化の原因として問題視のみされてきたCO2を、”見方を変えて”違った応用を模索している興味深い事例だと思います。こうした視点の転換はとても大切で、未来のイノベーションのきっかけになります。

人類の進歩は、困りごとをチャンスに変えて変革してきた流れといっても過言ではないかも知れません。今困っていることや問題となっていることがあれば、一度その事柄を回り込んでみて「何か策はないかな?」と考えてみるのも面白かもしれません。

最後にPrometheus FuelsのPR動画がありましたので、こちらも載せておきます。

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